畜産農家の未来を守りたい。「紅豚」のために起業した株式会社がんじゅうの挑戦
提供/株式会社がんじゅう
「鳴き声以外はすべて食べる」と言われるほど、沖縄の食文化に欠かせない豚肉。株式会社がんじゅうは、県内の3つの契約農場と協力し、豚肉の生産から仕入れ、加工、販売までを手がける会社です。がんじゅうで扱う豚肉は「紅豚」・「紅あぐー」と呼ばれるブランド豚で、全国の飲食店をはじめ、県内のデパートや読谷村にある自社レストラン「おきなわポークビレッジ」で提供しています。
がんじゅうの会社設立の経緯を、総括部長の仲宗根努さんに伺いました。
「代表取締役である桃原清一郎は、もともと県内企業で営業として働いていたのですが、取引先だった農場の豚肉を食べた際、そのおいしさにとても驚いたそうです。農家さんに話をきくと、長年研究して開発した独自の飼料を与えていたり、一般的な飼育日数よりも時間をかけて育てていたりと、ものすごく手間ひまがかかっていました。それにも関わらず、そのこだわりに見合った価格で販売されていないことに疑問を持ったそうです」。
なんとかこの豚肉の魅力をもっと多くの人に伝えられないか。そう考えた桃原さんは、会社で実施していた社内ベンチャーに応募。新たな県産ブランドの豚の販売という将来性が認められ、企画は見事採用されました。
こうして高品質な豚肉を販売する会社として株式会社がんじゅうが設立され、桃原さんらはその農家で育てられていた豚を「紅豚」と名付け、ブランド豚として売り出し始めたのです。
提供/株式会社がんじゅう
「当社のブランド豚『紅豚』は、ジューシーで柔らかな肉質と、脂がのっているのにあっさりとした味わいが特徴。しゃぶしゃぶのような素材を活かした料理で頂くとそのおいしさがよく分かるのでおすすめです」と仲宗根さん。
獣独特の臭いやクセがない秘密は、飼料にあるといいます。「『食べ物が体を作る』という言葉があるように、豚も飼料の良し悪しで肉質に大きく影響します。当社の契約農家では、独自で配合した飼料を発育に合わせて与えています」。
また、豚は本来デリケートでストレスを感じやすい生き物なので、豚舎を清潔に保つなど、環境作りにも常に気を配っているといいます。
がんじゅうでは精肉までの加工を一貫して行っているからこそ、肉質の微妙な変化にも気づくことができるそう。少しでも気になったことは農家へすぐにフィードバックするなど情報交換を密に行うことで、豚肉の品質向上につなげているといいます。また、トレーサビリティシステム(家畜が農場で育てられ精肉として消費者に届くまでを一貫して管理すること)を導入することでおいしさはもちろん、徹底した管理体制で食の安全性を保っています。
提供/株式会社がんじゅう
がんじゅうでは精肉以外にもソーセージや餃子、生ハムといった豚肉の加工食品も製造・販売しています。「今後は加工食品の種類を増やすだけでなく、多岐にわたる商品展開で6次産業を拡大していきたいと考えています。農業は生き物が相手のため、休みがない職業です。そのため『労力に対して収入が少ない』という印象を持たれることもありますが、畜産農家が育てた良質な肉を我々が適正な価格で、そして付加価値をつけて販売すれば、農家の収入が確保できます。農家が安心して飼育に取り組むことができる環境を作ることで、農業の未来を支えていきたい。そして、農業をしたいと思う若者が増えるような未来を作ることが私たちの目標でもあります」。
農家に寄り添い共に切磋琢磨しながら、がんじゅうは農家と消費者との架け橋となり、畜産業の新たな道を開いていきます。