ジューシーな甘さと爽やかな酸味
丹精込めて作られる東村・宮城さんのパインアップル

(左からN67-10、ゴールドバレル、ボゴールパイン、ピーチパイン)

 

西海岸のリゾートビーチとはひと味違う、穏やかな海やカヌーが楽しめるマングローブ林など、手付かずの自然が残る東村。言わずと知れたパインアップルの産地のひとつで、生産量は日本一を誇ります。パインアップルにはいくつか品種があり、例えば生産量が多いN67-10というハワイ種は、甘味と酸味のバランスがよく、柔らかくてジューシーな果肉が特徴です。他にもとろけるような甘さの高級品種ゴールドバレルや、手でちぎって食べられるボゴールパイン、果肉が白い小ぶりのピーチパインなど、それぞれ見た目も味も異なります。おいしいパインアップルの選び方は、果実の一粒一粒が張っているか。粒との境目がはっきりしているものほど実が熟していると言われます。また、パインアップルは追熟しない果物のため、なるべく早いうちに食べることでよりおいしさを味わえます。

 

「夏が近づくこの時期は、芯止めという作業を主に行います。実が小さいうちに葉の芯をこそげ取ることで、果実を大きく成長させることができるんです。また、芯から生えてくる小さな芽は、後に苗として使います。全て手作業なので大変です」と話すのは、パインアップル栽培歴約30年の宮城善光さん。奥さまと息子さんの3人で管理しているという畑は、1万5000坪もの広さがあり、路地栽培とハウス栽培の両方で約20万本のパインアップルの木を育てています。

 

パインアップルは苗を植え付けて2〜3年後に開花し、開花してから果実を収穫するまでに約210日かかると言われています。1本の木で果実は年に1つしか収穫できず、また同じ木で収穫できるのは2回までと決して効率のよい作物ではありません。宮城さんは、畑を「苗を育てるところ」「1回目の収穫をするところ」「2回目の収穫をするところ」と大きく3つにわけてパインアップルを育てています。「こうすると収穫時期がずらせるので繁忙期が拡散できるじゃなく、通年で収穫ができるんです。時間も手間もかかる作物ですが、自分で収穫時期をコントロールできるのが良いところですよ」。

 

中学校を卒業後、県外へ就職した宮城さんですが、結婚を機に沖縄へ戻り、父親の畑を引き継ぎました。「父の畑は昔から見ていましたが、一緒に畑へ出ると学ぶことがたくさんありました。一人前だと思えるようになるまで10年はかかりましたね。始めてすぐの頃は夜まで作業がかかってしまい、一緒に作業をしていた妻が泣いてしまうこともありましたよ」と当時を振り返ります。失敗することはあっても試行錯誤を重ね、徐々に自分のやり方を見つけたという宮城さん。その地道な努力の甲斐あって、引き継いだ当初は6000坪だった畑を倍以上の大きさにまで広げました。

 

パインアップルは沖縄でも北部や八重山など限られたエリアでしか栽培されていませんが、それは何故なのでしょうか。「その理由は土にあります。北部の酸性の強い赤土は水はけに優れていて、あまり水分を必要としないパインアップルの栽培に向いているんです。また、雨が降っても雨水が流れるように、山の傾斜を利用した畑づくりをしています。ハウスでは主に生果として売り出すゴールドバレルを育てています。ハウス栽培は温度調整ができ、路地栽培のものと比べると早く出荷することができますが、平地のため水が溜まって根腐れを起こしてしまうこともあるんです。パインアップルは本当に手がかかります」。

 

毎朝6時に畑へ出かけて様子を確認するなど、熱心にパインアップルを育てている宮城さんですが、畑での体験学習ができる民泊を積極的に受け入れるなど、パインアップル農家の将来のことも前向きに考えています。

 

「村内には約130名のパインアップル農家がいますが、うちのように50トンもの量を収穫するところは5名ほどです。農家の中には70代、80代の人も多く、後継ぎがいなくて遊休地となってしまった畑も多いです。そのような土地を農家同士で活用していけたら。私には嬉しいことに跡継ぎの息子がいますが、一人では管理できない広さの畑をどうするかなど、問題はあります。時間がかかる作物なので、長い目で自分のやり方を見つけていってほしいです」。