“当たり前”な食卓の風景を残していくために。
地域で赤カラシナの生産に取り組む名護市の久志地域

カラシナは、沖縄ではシマナー(島菜)と呼ばれるほど県民にとっては身近な野菜で、塩もみして炒め物や和え物にしてよく食べられています。沖縄県全域で栽培されていますが、沖縄本島北部の名護市、東海岸沿いに位置する久志地域では、昔から地元の人々によって在来種の赤カラシナが育てられてきました。中国から伝来したと言われている赤カラシナはその名の通り、葉の葉脈の部分が赤いのが特徴。年間を通して栽培できますが、旬は12〜4月で、この時期に収穫されるものは、より赤味が増すといいます。
久志地域では、先祖代々育てられてきた赤カラシナを残していこうと「二見あかカラシナ生産組合」を発足し、農家の方々を中心に地域の人々も一緒に栽培を行っています。名前にある「二見」とは、久志地域の集落の一つ。二見区のとあるおばぁが、沖縄戦時中も大切にこの種を保管し守っていたことから、敬意を込めて「二見あかカラシナ」と名付けられました。

 

右から二見あかカラシナ生産組合長の比嘉晴さん、組合員の澤岻安英さん、生産組合事務局の服部あや乃さん

 

「沖縄でチキナー(沖縄の方言でカラシナの塩漬けのこと)と言えば、昔は赤カラシナのことでした。家族で受け継いできた種を植えて、食用である葉を収穫した後は花が咲くまで育て、それから種を採取し、植える時期まで保管するというサイクルでした。それが、本土から西洋カラシナが入ってきて、種が簡単に手に入るようになり、栽培をする人が少しずつ減っていったんです」と話すのは組合長の比嘉晴さん。
高齢化に伴い、赤カラシナを育てる農家が、一人、また一人と減っていく現状をどうにかしたいという思いから、比嘉さんを中心とした有志が近隣の集落に声をかけて、2016年に
生産組合を発足させたのです。

 

「赤カラシナがいつ頃からあるか?それは、わからないぐらい前からですね(笑)。小さい頃から食卓に当たり前のように並んでいましたよ」と話すのは組合員の澤岻安英さん。本業は寿司職人で、午前中は畑の作業、午後からは本業の仕事に取り掛かります。「仕事もあるし、歳なので(笑)、あまり多くは育てられませんが、できる範囲でもいいので受け継いでいきたいと思い、組合に入りました」。
赤カラシナは種を植えてから夏期だと30日、冬期だと45日ほどで収穫できます。「つきっきりで育てる必要はありませんが、大変なのは防虫対策。虫が入ってこないようにネットをしっかりと張り、2〜3日におきに一株ずつ様子をチェックします」。葉野菜は根腐れを起こしやすいため、雨が降ると水はけがきちんとできているか小まめに見に行くなど、シンプルな栽培方法でも、愛情を込めて育てられているのが伺えました。

 

久志地域で栽培された赤カラシナは、地域の拠点施設である「わんさか大浦パーク」の農産物直売所で買うことができます。わんさか大浦パークは、近隣の集落で資金を出しあい設立した施設で、直売所だけでなく、イベントの開催や特産品を使った加工品の開発にも取り組んでいます。
「赤カラシナは西洋カラシナよりも香りや辛味が強く感じられるのが特徴で、火を通すと味が濃くなります。アントシアニンが含まれているのは、赤カラシナならではです」と話すのは、わんさか大浦パークで加工品の開発に携わっている服部あや乃さん。

 

施設では生鮮の二見あかカラシナだけでなく、「はなぱんちゅん物語」という加工品も販売しています。「炒め物や餃子などのお惣菜はこれまでも販売していましたが、組合長の比嘉さんから、『お土産として気軽に持ち帰れる加工品を作ってほしい』と相談されたのが誕生のきっかけです」と服部さん。塩漬けにした二見あかカラシナとアグー豚肉、島唐辛子を一緒に炒めたもので、ご飯のお供にぴったりなんだそう。
“はなぱんちゅん”とは、鼻につんと来るという意味。瓶には、食べ方や二見あかカラシナの歴史についてまとめた紙が添えられています。生産量は決して多くはなく、加工も一つひとつ手作りのため大量生産はできません。しかし、「一人でも多くの人に久志地域のことを知ってもらいたい」という思いが「はなぱんちゅん物語」にはつまっているのです。
「当たり前だと思っていたごく身近なものでも、努力しないとなくなってしまうこともあります。今後は、若い生産者を増やす体制を整えていくことや、わんさか大浦パークとも更に連携して加工品の開発を進めていくなど、新しいことにも取り組んでいきたいと思います」と比嘉さん。先人から受け継いだ種から、これからどんな新しいものが生まれるのか楽しみです。

 


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