お母さんの愛情たっぷり
小池さん家のパッションフルーツ

 

糸満市ときくと“海のまち”をイメージする人が多いかもしれませんが、にんじんやマンゴー、パッションフルーツなど様々な農産物の拠点産地に認定されるほど農業も盛んなまち。そんな市内ののどかな集落で、パッションフルーツを育てているのが、「熱帯果樹園 小池さん家」の小池美智代さんです。

 

果実の中の種ごと食べるパッションフルーツは、芳醇な香りとさわやかな甘酸っぱさが人気の熱帯果樹。美智代さんが育てた果実は、毎年行われている「おきなわ花と食のフェスティバル」園芸部門品評会の果樹部門において、2016年、2017年の2年連続で金賞を受賞するなど、その品質は高く評価されています。

 

 

「秘訣?たまたまじゃないですか(笑)」と笑う美智代さんですが、お話をきくとどれだけ手塩にかけてパッションフルーツを育てているかが伺えます。例えば土壌づくりには米ぬかやビール粕などを使用し、また少なくとも週に1度は、マンゴーの種や皮などを発酵させた自家製の液肥を土や葉面に散布します。「安心安全が一番」と、農薬等は極力使用していません。2016年度には、エコファーマーの認定も受けています。

 

 

植えた苗が成長したら一株ずつ丁寧に棚に這わせ、枝が伸びたら隣の苗木と絡まぬよう誘引や剪定を繰り返し、咲き終わった花殻は、ひとつひとつ手で摘んでいきます。

 

「朝7時から夜7時くらいまでやることもありますよ。1日休んじゃうと次の日は倍のことをやらないといけないし、取り戻せないかもしれない。だから休めないですよ。毎日、毎日、ちいさなことの積み重ね。子育てと一緒ですね」と、3人の息子さんを育てあげた美智代さんは言います。

 

そんな母親の視点が畑づくりにも生きていて、「人間も木も“土台“が大切」と、どうすればしっかりした樹木が育つか、日々試行錯誤を繰り返しているのです。

 

 

小池さん家ではここ数年、6次産業化にも力を入れています。息子の柾(まさき)さんが元パティシエの経験を生かし、規格外品の果物を活用した商品開発や、SNSで果実の食べ方といった情報を発信するなどしてサポートしているのです。

 

「市場価格が安定しなかったり、ちょっと見た目がわるいだけで市場に出荷できなくて破棄するというのを昔から見ていて、なんとかできないかと思って」と柾さん。そんな思いから、規格外のパッションフルーツをたっぷり使用したフルーツバターを自ら開発。パッションフルーツの種ごと使い食感も楽しめる風味豊かでさわやかな甘さのバターは、2019年春の発売以来、その評判は上々だといいます。

 

 

「『小池さんの果物はおいしい』って言ってもらえるのが、何より嬉しいですよ」と美智代さん。SNSのおかげで、消費者から声が直接届き、それがとても励みになっているといいます。

 

「畑作業が大変?そんなこと全くないです。楽して楽しくて、ずっと畑にいたいくらい(笑)」。子を見守る親のように、今日も美智代さんは畑作業に精をだします。

 

鮮やかな紫色に艶めく丸い果実の中には、作る人の愛情もたっぷり詰まっているのです。

店データ

■熱帯果樹園 小池さん家

TEL 080-4274-1403

https://www.passionfruit.okinawa