ふわりと広がる花の香りに、すっきりとした自然の甘さ
その美味しさにきっと驚く「琉球百花はちみつ」

沖縄本島南部に位置する南城市(なんじょうし)は、海や緑など豊かな自然に囲まれており、畜産や農業が盛んな地域。そんなのどかな場所で養蜂に取り組んでいるのが、楽ワーク福祉作業所です。実は、沖縄県は2019年に全国一の飼育数を誇るほど養蜂が盛んな県。そのほとんどは、「ポリネーション」といって花粉交配用のミツバチとして県外へ出荷されていますが、楽ワーク福祉作業所では、自分たちの農園で養蜂を行い、そこで採れたはちみつを商品化し、販売しています。

 

「ある沖縄県産のはちみつを初めて食べたとき、そのおいしさに驚き、感動したのを今でも覚えています」と話すのは、サービス管理責任者の玉城達矢さん。これまで自分が食べていたはちみつと味が全く異なることを不思議に思って調べてみると、外国産などのはちみつは、ミツバチのエサに砂糖水が与えられていることを知ったといいます。「砂糖水だと、どうしても甘すぎるはちみつになるんです。それに対しておいしいなと思った県産の蜂蜜は、ミツバチが自然の花から蜜を採っていたり、ウイルスを媒介するダニを駆除する際に薬剤を使用しないなど、なるべく自然に近い状態でミツバチを育てている。それがとてもいいなと思ったんです」

 

養蜂に興味を持って色々と調べていくうちに、海外では福祉施設でも養蜂が行われていることを知った玉城さん。自分たちでも出来るのではと、県内外の養蜂家から飼育方法を学び、約3年前に自ら養蜂をスタートさせました。教えてもらった養蜂家に倣い玉城さんもなるべく自然に近い飼育方法を取り入れていますが、最初の一年は特に大変だったといいます。「大きな台風が来て、花がほとんど散ったせいで蜜が取れず、その年の収穫はほとんどありませんでした。自然や生き物が相手なので、中々難しいです」。

ミツバチの移動範囲が約2kmということを考慮し、蜜を採りに行く花の場所が重ならないよう南城市内に数箇所、沖縄本島中部に位置するうるま市の勝連(かつれん)城跡のふもと近くに一箇所と巣箱を分けて置いています。様子を見に行くのは週に1回ほどですが、箱内に数枚入った板状の巣の様子を一枚ずつ目でチェックし、不要なものがついていればピンセットを使って手作業で取り除くなど、かなり手間暇のかかる作業を行っています。

 

ミツバチは、温度が15度以下になると活動をやめてしまう生き物。年間を通して暖かい気候の沖縄だからこそ、その季節ごとに咲く自然の花から蜜を採ることができるのです。「沖縄に咲く様々な花からできたものという意味を込めて『琉球百花はちみつ』と名付けました。加熱処理をしていないため、はちみつの色は透き通った明るい茶色。蓋を開くとふわりと花の香りが広がります。南国沖縄ならではの、少し酸味があり、フルーティな味わいが特徴です」。蜜を採取する花が違うので、春はコクがあり、秋はすっきりとした甘さなど、季節によって異なる味のはちみつを楽しむことができます。多くの量は収穫できないので、春、夏、秋、冬と季節ごとに限られた数量を小瓶に分けて販売しており、そのシーズンで売り切れてしまうこともあると言います。

 

「琉球百花はちみつ」が出来上がるまでの工程は、全て楽ワーク福祉作業所内で行われます。作業をするのは、そこに勤める障がいを持つスタッフのみなさん。玉城さんをはじめとする指導員の指導の下、飼育から収穫、瓶詰めなどの作業のほかにも、養蜂に欠かせない蜜源植物として、パッションフルーツやドラゴンフルーツ、ホーリーバジルとよばれるハーブも栽培しています。「人手不足の農業分野に仕事がしたい障がい者が参加することで、ウィンウィンな関係が築けるのを目標にしています。琉球百花はちみつも、福祉作業所の商品だからという理由ではなく、“おいしいから買いたい”と感じてもらえることで、スタッフも自信を持って仕事ができます。大変だけど、やりがいがありますよ」と話す玉城さん。福祉と農業、そして養蜂業界がかけ合わさることで、みんなが笑顔になれる社会が出来上がっていくのかもしれません。

 

店データ

■株式会社楽ワーク福祉作業所

南城市玉城字堀川511番地

http://raku-work.jp/