“本物”の味を届けたい
手間ひま惜しまない勝山シークヮーサーのこだわり
沖縄本島北部に位置する名護市内の集落・勝山は、嘉津宇岳(かつうだけ)や安和岳など、緑豊かな美しい山々に囲まれた場所。昔から多くのシークヮーサーが自生していたこの土地で、「農業生産法人 有限会社勝山シークヮーサー」は地元シークヮーサー農家の畑の管理から加工、商品の販売を行っています。
シークヮーサーはレモンのような酸味が特徴の小ぶりの柑橘で、9月頃から青切り(熟す前の皮が緑色の状態の果実)の収穫が始まり、完熟が収穫される12月頃までが旬の時期です。山の傾斜は果実の栽培に適するとされ、(有)勝山シークヮーサーが搾る果汁は「他のところとは香りも味も違う」とリピーターになるお客さんも多いそうです。
「勝山は『シークヮーサーが選んだ土地』といわれています。山の傾斜も自然から生まれたものですし、元々自生していた品種もバランスよく混ざり合っているのが香り高い理由ですね。おいしさは勝山の気候風土があってこそ」と話してくれたのは、代表取締役の安村弘充さん。
勝山でシークヮーサーの栽培が始まったのは、1970年頃。その頃はなんと1キロ50円台という安価で販売されていたそうです。このままでは農業を続けていくのが難しい。なんとか特産物を作って地元を明るくできないか。そんな思いから、2003年に会社を設立したのです。
提供/有限会社勝山シークヮーサー
「果実選別の基準は『自分の子どもや孫が食べても大丈夫なもの』。これは先代の頃から大切にしている思いです。いちばん大切な作業は、人間の手で行う。一つひとつ念入りに確認します」と安村さん。シークヮーサー本来の味が楽しめるようにと、収穫した翌日には搾汁を行います。
加工する際の搾汁方法にもこだわりがあり、勝山シークヮーサーでは2つの搾汁機を使い分けています。それぞれの機械によって細かな力加減で搾ることで、果実の旨味を引き出したり、身体に良い成分を閉じ込めることが出来ます。「これらの搾汁方法は皮も一緒に搾るので、香りと油成分を逃しません。他の方法と比べると手間ひまもかかり、搾汁率は低いけれど、良いものができますよ」。
「木々は高くなりすぎないよう剪定をこまめに行っています。作業の負担が減るだけでなく、日当たりが良くなるのでおいしい実が出来るんですよ」と話すのは、シークヮーサー農家の1人である仲栄真さん。年間およそ2トンものシークヮーサーを収穫する仲栄真さんの畑は、細かな手入れが行き届いており、愛情がたっぷりとかけられていることが伺えます。
「特に苦労するのは害虫対策。木が枯れないよう、有機肥料で栄養を与えて木を強くしています」。肥料は与えすぎても少なすぎても良くないため、肥料をいつ、どれくらい与えたかを逐一記録しているそう。また、使用している有機肥料には選別からもれた規格外のシークヮーサーを独自でブレンドしているため、土にとても馴染みやすく、木との相性もよいそうです。
無添加・無着色にこだわった人気商品の「sea-sun(シーサン)勝山シークヮーサー500ml」をはじめ、皮や種をまるごと搾った「ゴールド」など、飲料だけで約20種類と豊富なラインナップ。中には初摘みの爽やかな酸味を味わう「青切り」や、優しい甘みが特徴の「完熟」など、収穫する時期によって味わいが異なるシークヮーサーの魅力が楽しめる商品もあります。
また、地域とのつながりを大切にする勝山シークヮーサーでは、「実際に足を運んで勝山の場所を知ってもらい、商品を手にとってもらいたい」と、農家や地域の店舗などが参加する「勝山軽トラ市」というフリーマーケットを2016年から毎月開催しています。「消費者の6割は県内ですが、実は沖縄県民にシークヮーサーを飲むという文化はあまり浸透していません。まずはそれを確立させることが目標です」と安村さん。その思いを胸に、勝山シークヮーサーは緑いっぱいの豊かな土地から「本物の味」を届け続けます。