料理通信、「料理通信社」といただきました。沖縄食材の魅力!

ワインと合わせたい、マグロ好きシェフによるマグロ料理

「沖縄らしい食といえばマグロですよ」と地元の人に教わって以来、注意深く街を歩くと、たしかにスーパー、市場、鮮魚店などで圧倒的な品数で売られています。飲食店でもマグロ丼を出す店が多いことに気付いたのは、「沖縄といえばマグロ」というのを知ってから。冷凍されず生鮮のまま水揚げされるからこそ、頭からシッポ、皮までラインナップが豊富。以来、必ず棚をチェックするようになりました。

 


(何度見ても感動する、マグロの部位の多様さ!)
 

「僕は、生粋のマグロ好きです」と話してくれたのは那覇市久茂地にある「モダンバル餐仕(さんじ)」のシェフ、中尾純さん。昼は名物の信州蕎麦を中心としたボリュームのあるランチ、夜はワインとつまみを楽しめるお店です。

「近隣がビジネス街で、ランチ難民がたくさん出てしまうエリアです。フードトラックもありますが、コンビニ弁当しか選択肢がないことも少なくなくて。少しでも皆さんのお昼を担えたらと思って」とランチをフルスロットルで営業。

一方、夜は、島豚バラ肉と島豆腐を使った「肉豆腐」、県産生ハチミツを使った「ゴルゴントースト」、「県産若鶏モモ肉のグリル」など、沖縄の食材を使ったメニューを織り交ぜながら、フランスはもちろん、ニュージーランドや南アフリカなどニューワールドのワインをグラス一杯から頼むことができます。「カトラリー不要の料理なので、気軽に楽しんでもらえたら」と中尾シェフ。

 

 

炙ったマグロと薫香ポテサラを合わせて奥行きを

人気なのが「炙りマグロとジャガイモのサラダ」。ポテトサラダはマヨネーズではなく、玉ねぎを使った自家製ビネグレットソースでキリっと仕上げ、表面を軽く炙ったメバチマグロのスライスで巻いた、華やぐ一皿。
 

(ディルや赤カイワレ、マイクロハーブなど3~4種類をあしらって)
 
ポテトサラダは水分を飛ばして、メバチマグロのみずみずしさと合わさることで互いに引き立て合うバランスに。

「以前、本マグロとブルゴーニュのピノノワールを合わせたら、ドンピシャではまったことがあって。それが、この料理のきっかけです。ポテトにはアクセントにいぶりがっこを忍ばせてあります。ギリシャのロゼを合わせると最高ですよ」と中尾シェフ。

いぶりがっこの薫香×炙ったメバチ。スモーキーな香りが重なって奥行きがあり、ポテトにはキュンと酸が効いている。飽きずに食べ進められるので、つい、ワインをもう1杯頼みたくなります。
 

(表面にうっすらと火を入れたメバチマグロ。赤身部分は水分をたたえてジューシー)
 

(薄くスライスしたマグロをラップの上に重ねて広げてスタンバイ)
 

(ポテトサラダをのせたらくるりと巻いて球体にします)
 
マグロ×ポテトサラダ、マグロ×ワインの組み合わせについて、「地元の人は、こんな食べ方があるの? と驚かれることもあり、新しい発見を喜んでくれます」。
 
 

深夜の行商で、マグロが売られている?

那覇市・泊漁港内にある市場「泊いゆまち」には、水産卸や小売店など25軒弱のお店が並んでいます。一般の買い物客、観光客が食べたり買ったり楽しめる店舗もあれば、プロが足を運ぶお店も。「たくさんある中でも僕はいつも『魚しげ』さんと『沖興水産食品』さんで、部位指定で購入します。どちらも鮮度の良い魚を卸してくれるお店で、信頼しています」と中尾さん。

一方、街の話で興味深かったのが「繁華街に行くと、夜遅くにスナックなどに、保冷バッグを抱えた行商が入っていって、マグロを売っていたりしますよ」。

スナックに行商!(驚) 那覇ではよく見る光景なのでしょうか・・・。沖縄の夜の景色に俄然興味をかき立てられたひと言でした。
 

(テーブル席の1つは、ガラス越しにシェフの手元を見ることができます。炙ったマグロを真剣なまなざしで切り出す中尾シェフ。料理人の仕事をすぐ目の前で見られる楽しさ! オススメの席です)
 
 

もっと広がる! マグロの愉しみ方

「マグロの可能性ってたくさんあると思うんです。生鮮マグロでツナを作って、バインミー(ベトナムのサンドイッチ)にしてもいいし、バルサミコのシャリ×マグロもきっと合う。泡盛を使ったマグロの酢味噌和えには、ニュージーランドのソーヴィニヨンブラン、マグロのレアカツにはボルドーのロゼを合わせたら、絶対においしいですよ」

地元の人たちにこそ、もっと那覇マグロのおいしさや食べ方を知ってほしいと思うから、「みんなの知っているメニューで、みんなが知っている名前で、料理の仕立てを変えて出せたらと思っています」と中尾さん。

マグロ好きだからこそ次々と出てくるメニュー案。漁港だけでなく、街場のマグロ料理もぜひ味わってみてください。

料理通信

浅井 裕喜の写真

株式会社料理通信社 広報担当

浅井 裕喜(あさい ゆき)

食情報を伝えるメディア、料理通信社の広報担当。Facebookやtwitter、instagramなどSNS公式アカウントの“中の人”でもあり、読者やファンの声を拾いながら密なコミュニケーションを図る。

食情報を伝えるメディア、料理通信社の広報担当。Facebookやtwitter、instagramなどSNS公式アカウントの“中の人”でもあり、読者やファンの声を拾いながら密なコミュニケーションを図る。

料理通信社

食のオピニオンリーダーたちのアンテナを刺激する雑誌『料理通信』の刊行、“食で未来をつくる・食の未来を考える”をテーマにしたWEBサイト「The Cuisine Press」、食を取り巻く社会課題に向き合うアクションを行う活動体「or WASTE?」を運営。

料理通信の表紙