おうちでかんたんフレンチ「紅芋のヌイユ」
秋から冬にかけて旬を迎える「紅芋」。少し粘り気のある食感と上品な甘さで、天ぷらなどの料理のほか、鮮やかな色味を生かしお菓子の材料としても人気の沖縄食材です。
「紅芋のレシピというと揚げたり蒸したりというのが多いですが、今回は県産魚と合わせてヌイユ(麺)を作りたいと思います。意外かもしれませんが、魚介と合わせることで紅芋の風味や香りが立つんです」と話すのは、今回レシピを教えていただくフレンチシェフの小島圭史さん。
小島さんが営む「名前のない料理店」は、出向いた先で季節の沖縄食材やジビエなどを使ったフレンチのフルコースを提供する出張料理専門店。小島さんがつくる繊細で食材の魅力を引き出す豊かな味わいのフレンチは、県内外で多くの人を魅了しています。
ヌイユとは、フレンチのお肉料理などに付け合わせとして添えられる「麺」のこと。
「麺づくりは難しいイメージがあるかもしれないですが、フードプロセッサーで混ぜるだけで生地はできますので、とても簡単ですよ」
使用するのは紅芋と白身魚、中力粉、全粒粉、乾燥エビ、本葛粉など。
「生芋だけだと色味が薄いので、紅芋パウダーも入れています。全粒粉を少し加えることで麦の香りが立ちます。今回は『島麦かなさん』という県産の麦粉を使っています。中力粉が入手しづらい時は、薄力粉と強力粉を同割り(5:5)にしたものでも大丈夫です」
まずは生地作り。乱切りにした紅芋と魚、乾燥エビ、卵白、塩をフードプロセッサーに入れてペーストに。
「今回はカジキですが、マンビカー(シイラ)など白身系の魚であれば合いますよ」
水で溶いた本葛粉を加えてさらにかく拌します。中力粉と全粒粉とオリーブオイルを入れて軽く回し、団子状になったら取り出します。
取り出した生地に多めに打ち粉をして、捏ねること約5分。
「小麦粉をそれほど使っていないので、グルテンの粘り気も少ないんです。なのでここで生地をまとめます」と小島さん。捏ねた後は丸くまとめて、ボウルに入れ30分ほど冷蔵庫で寝かせます。
いよいよ麺作りも終盤。寝かした生地を麺棒で薄く伸ばす工程へ。
「伸ばして、折りたたんで、また伸ばす。これを数回繰り返すことで麺にコシがでます」と小島さん。
厚さ2mmほどに伸ばしたら、1.5cm幅に包丁でカット。太麺なので、切る作業に技術を要さないのが嬉しいところ。「もし作りすぎてしまったら、この状態で冷凍して保存もできます」
沸騰したお湯に少量のオリーブオイルを入れて8分茹でたら、冷水に取り、水気を切って麺の完成。
ちなみに、茹でるときのポイントは「沸騰しすぎない程度のお湯で茹でること」。ボコボコ沸騰したお湯だと麺の旨味が逃げてしまうそう。
次はソースづくり。まずは基本のトマトソースから。使用する材料はオリーブオイル、ニンニク、カットトマトに、なんとリンゴ酢。「酢に含まれる塩分で十分味が調います。シンプルなので、好みのハーブを加えてもいいです」と小島さん。トマトソースができたら、その半量を別のフライパンに取り分け、イカ墨と白ワインを加えたらイカ墨ソースの完成です。あっという間に2種類のソースが出来上がりました。
フライパンでそれぞれのソースと麺を絡めて、お皿に盛り付ければ完成!オリーブオイルとビネガーでさっと和えたサラダを添えれば、彩りもきれいです。砕いたジーマーミ(落花生)をアクセントに散らすのもおすすめです。
さてそのお味は…もちっとした太い麺をひとくち。ふわっと広がる紅芋の風味とほのかな甘みを、ソースの旨味が引き立て、素材のおいしさが口の中に広がります。
「生地に魚が入っているので、食べ応えもしっかりありますから、これ1品でも十分満足できると思います」
特別な道具や素材がなくても、おうちで気軽に作れるフレンチ。
普段のご飯にも、ちょっと特別な日にも作りたくなるレシピです。
(4⼈分)
- [ヌイユ]
- 紅芋
- 70g
- 紅芋粉
- 10g
- ⿂切り⾝ (クセの少ない⿂何でも可)
- 50g
- 乾燥海⽼ (アミエビなど)
- 10g
- 卵⽩
- 1/2個分
- 塩
- 2g
- 中⼒粉 (強⼒粉と薄⼒粉同割でも)※
- 40g
- 全粒粉
- 10g
- 本葛粉 (芋葛、⽚栗粉でも代⽤可)
- 5g
- ⽔
- 10cc
- オリーブオイル
- 5cc
- 打ち粉 (※と同じ粉⼜は強⼒粉)
- 適宜
- [ソース 2種]
- カットトマト⽸( ⽪・種を取り除いて乱切りでも可)
- 1⽸(⽣トマト250g)
- ニンニク (みじん切り)
- 1⽚
- オリーブオイル
- 適宜
- りんご酢
- 10cc
- イカ墨
- 10g
- ⽩ワイン
- 5cc
- ❶. 紅芋はラップし電⼦レンジで加熱(700w で4 分)。⽪を剥いて乱切りに。⿂も乱切りにする。
- ❷. ①と紅芋粉、乾燥海⽼、卵⽩、塩をフードプロセッサーでペーストにする。
- ❸. ⽔で溶いた本葛粉を加えさらに回す。
- ❹. 中⼒粉、全粒粉、オリーブオイルを加え軽く回し、団⼦状になったら取り出す。
- ❺. ④を台(またはボール)で⽣地がベタつかなくなる程度に打ち粉を加えながら5 分程捏ね、30 分ほど冷蔵庫で休ませる。
- ❻. ⽣地を2 ミリ厚程度に伸ばし、1.5 センチ幅にカットする。
- ❼. 沸かした湯にオリーブオイルを少量⼊れ、8分茹でる。途中湯が沸き過ぎないように⽕加減を調整。
茹で上がったら冷⽔に入れて冷まし、水気を切っておく。 - ❽. フライパンにオリーブオイルとニンニクを⼊れて⽕にかけ、⾹りが出たらトマトを加え5分程煮る。
鍋肌からりんご酢を回し⼊れ、3 分程煮て酢を⾶ばせばトマトソースのできあがり。 - ❾. 別のフライパンに⑧の半量を移し、イカ墨、⽩ワインを加え3分煮て、イカ墨ソースを作る。
- ❿. それぞれのソースが入ったフライパンにヌイユを入れ、ソースと絡める。
❶麺を茹でるときは、お湯を沸騰させすぎないこと。
❷ソースをつくるとき、ニンニクを焦がさないように。
名前のない料理店 小島圭史さん
- 住所
- 詳細はメールにてお問い合わせください
- TEL
- 詳細はメールにてお問い合わせください
- URL
- なし
出張料理という独自のスタイルで、自身が吟味した沖縄県産食材を使ったフレンチのフルコースを提供。食材をつくる生産者の思いを、料理を通して伝える。不定期営業の予約制カウンターレストラン『Mauvaise herbe』(モヴェズエルヴ)でも小島さんの料理を楽しめる。問い合わせ・予約はメール(restaurant4sln@gmail.com)にて。