美しい海からの恵み“海洋深層水”で育まれる
実がつまった久米島の海ぶどう

プチプチとした食感と鮮やかなグリーンが特徴の海ぶどう(和名:クビレズタ)は沖縄の海で育つ海藻の一種。もともとは宮古地方で古くから食用海藻として食べられていたものですが、沖縄県全域に普及したのは1989年に恩納村漁協によって陸上養殖技術が開発されて以降のこと。今や沖縄料理には欠かせない海産物として人気の食材で、県内の様々な地域で養殖が行われています。中でも久米島は県内でトップクラスの生産量を誇っています。

 

久米島は沖縄本島那覇市から西に約100km、沖縄諸島で最も西に位置する島です。白砂の砂州が見事なハテの浜など美しい海浜地帯があり、島全体が県立自然公園に指定されているほど豊かな自然環境が魅力。近年は『海洋深層水』が採れることでも注目を集めています。海洋深層水とは、太陽の光が届かない200m以下の深い場所から採取される海水のこと。低水温で栄養塩類が豊富なためマグネシウムやナトリウムなどのミネラルを多く含み※、陸地由来の菌などが少ないため清浄性が高いのが特徴です。
「久米島で海ぶどうを養殖しているのはうちだけですが、好条件に恵まれていると思いますよ」と話すのは、久米島海洋深層水開発株式会社 場長の仲道司さん。同社は海洋深層水の特性を活かし、飲料水や自然塩の生産のほか、海ぶどうの養殖事業にも取り組んでいます。

※マグネシウムの量は水道水9.5mg/lに対し球美の水(硬度1000)
216mg/l(久米島海洋深層水開発(株)研究所調べ)

 

 

海ぶどうの養殖はまず、母藻(ぼそう)と呼ばれる苗をネットに植え付けたあと、水槽の中で育成します。3日ほどで芽出しが始まり、収穫できる大きさになるまでに夏場で約1ヶ月、冬場は約2ヶ月かかるそうです。

「うちの強みは沖合2.3km、深さ612mから採取した海洋深層水をかけ流しで使えること。表層水(太陽の光が届く範囲の海水)は天候や時期によって水温が20〜30℃と安定しませんが、深層水は水温が10℃前後と低温で安定しています。この2つをブレンドすることで温度管理がしやすく、一年を通して海ぶどうが育ちやすい環境が整えられるのです」と仲道さん。海ぶどうは水温にデリケートな海藻で、生長に最適とされる温度は25℃前後。そのため、育成中は細心の注意が必要で、仲道さんをはじめスタッフの皆さんは毎日こまめに水温や水質管理をしているといいます。

 

大きく生長した海ぶどうは、スタッフの手作業で1本ずつ丁寧に摘み取られます。枝分かれしている房はないか、粒はびっしりついているかなど、見た目の良さも細かくチェックし選別。商品にならない海ぶどうは、次の植え付けの母藻としてまた利用されるので無駄にはならないそうです。こうして選別された海ぶどうは、洗浄と摘み取り後の傷口を塞ぐためにきれいな海水に浸けて養生したあと、「球美(くみ)の海ぶどう」として県内や全国へ出荷されます。

「おいしい海ぶどうの見分け方は、粒が密でそろっていて緑色がきれいなもの。まさしく私たちが目指しているものです」と仲道さん。品質管理を徹底し大切に育てられた「球美の海ぶどう」は、粒が大きくジューシーで、海の香りが口の中いっぱいに広がるのが特徴。自社の海ぶどうの味わいに合うよう特別に作ったという特製つけダレで食べれば、味がまろやかになりまた違ったおいしさを楽しむことができます。

 

10年以上海ぶどうの養殖に携わる仲道さんですが、実は海ぶどう自体が未解明のことが多い生き物なのだそう。「同じ海水、同じ餌、同じ光を当てて育てても違いがでてきます。失敗してチャレンジしての繰り返しで、今もずっと試験してデータをまとめてばかりです。水温についてもたくさん模索しました。でも未解明だからこそ研究あるのみで、そこに可能性があると思うんです。僕たちはずっと“一年生”ですね(笑)」。

もっとたくさんの人においしい海ぶどうを食べてもらうために、養殖技術を確立しようと日々真摯に取り組む仲道さんたち。その思いに応えるように、水槽の中の海ぶどうはきらきらとグリーンに輝いていました。

 

店データ

■久米島海洋深層水開発株式会社

TEL 098-985-7822

http://www.kuminomizu.com/