宮古島の太陽の光と豊かな自然の中で
大切に育てられる吉野果樹園のマンゴー
夏の熱帯果樹を代表する果物・マンゴー。沖縄県は全国1位の収穫量を誇りますが、なかでも宮古地区は県内生産量の約3分の1を占めています。沖縄本島の那覇市から南西に約300kmに位置する宮古島は、平均気温が約23度と沖縄本島よりも1〜2度高くより温暖な気候。サンゴ礁が隆起してできた島の土壌はミネラルが豊富なことから、マンゴーなどの熱帯果樹の栽培に適している環境といわれています。
宮古島のシュノーケリングスポットとして人気の吉野海岸のほど近くにある農業生産法人吉野果樹園では、約7020平米の敷地に建てられたビニルハウスの中で、約250本のマンゴーの木を栽培しています。「この果樹園は兄が始めました。『マンゴーを育てるから少し手伝ってくれと』と言われて、お手伝いのはずが、気がついたら13年経ちました」と笑って話すのは、根間正夫さん。マンゴー畑の手入れは正夫さんを中心に2〜3名のスタッフで行っています。
果樹園で育てられている品種は、アップルマンゴーの名前でおなじみの「アーウィン種」をはじめ、実が大きく表皮がグリーン色の「キーツ」、2012年に発表された沖縄生まれのブランド「夏小紅」など。収穫期はアーウィン種が6〜7月頃、キーツは8月頃、夏小紅が7月下旬頃からとそれぞれ異なっています。
「マンゴーは赤紫色に色づいているというイメージが強いでしょう。だからどこの農家もアーウィン種がメインになってしまうんですが、夏小紅という品種は抜群に甘い。PRを工夫したらもっと人気がでると思いますよ」と正夫さん。
夏小紅は糖度が18度前後と非常に高く、食感もよいことから、首都圏の高級フルーツ専門店からも高評価。生産量が少ないため希少性が高く、期待の品種だそうです。
「マンゴーを育てるコツ?なんでしょう…根気ですかね(笑)」と話すように、マンゴー栽培は地道な作業の繰り返しだといいます。取材に訪れた7月上旬は、ちょうどアーウィン種の収穫時期。マンゴーは実がつくと重さで枝がたわむので、太陽の光が実にきちんとあたるよう枝を天井からロープで一枝ごと吊り上げます。また、実は食べごろになると自然落下するため、落下防止のための袋がけを施すのです。
「これは全部手作業ですね。袋は日焼けによる色ムラも防ぐんですが、僕はここに、エアコンプレッサーで空気をいれて袋を膨らませています。そうすると、色ムラが少なくきれいに色づくんです。別の農家さんにここまでやるの?と言われたことがありますけど、やっぱりやるときれいですから」。
(左)収穫直前のアーウィン種。(右)夏小紅。
食べごろになると皮は全体が黄色く、上部が薄紅色に色づく
もちろん作業は収穫時期だけではありません。収穫が終われば、来年に向けた準備がスタート。また実をつけてもらうために肥料をやって土壌を作り、剪定などをして木を育てます。
「よく母体に例えるんですが、木自体が健康じゃないとおいしい果実はできません。収穫時期は大変ですねとよく言われますが、まず花を咲かせるまでが一苦労。花が咲かないと受粉もできないし実もならない。2〜3月ごろにきれいに花が咲いてくれると、今年も大丈夫だなととりあえず一安心しますね」。
おいしいマンゴーの見分け方は、りんごのように肩がぷっくりと盛り上がっていること。カットして果肉が濃いオレンジ色だと申し分ないそうです。
吉野果樹園のマンゴーは農産物直売所に卸したり、JAを通して県内外へ出荷されます。果樹園に併設された直売所でも販売しており、直売所には日本全国からお客さんが訪れ、ときには気さくに農園の中を案内することもあるそうです。
「当たり前ですけどおいしいと言ってもらえるのは一番うれしいですね」と正夫さん。毎日木の様子を観察し、こまめに手入れをする。こうした日々の繰り返しが、とろけるような甘さのマンゴーへと実を結ぶのです。