奥ゆかしくて控えめな沖縄食材「マグロ」
沖縄を訪ねること8回。改めて出会った食材が「マグロ」でした。
沖縄県で水揚げされる魚で最も多いのは、ダントツでマグロです。平成28年の沖縄県魚種別漁獲量割合では、マグロ類が全体の62%。そして沖縄には、日本国内で水揚げされる4種類のマグロ(クロマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、ビンナガマグロ)のすべてが揃います。最も特徴的なのは、近海に漁場があるため冷凍せずに“生鮮マグロ”の状態で港に揚がること。かつ、四季を通して旬のマグロが常に水揚げされることにあります。
では、質問です。
皆さんはこれまでに、「沖縄といえばマグロ」を意識したことはありますか? レストランガイドでマグロ料理を検索したり、ガイドブックを読んで「マグロを食べて帰るぞ!」と心に決めたりしたことがある方は?
「沖縄といえばマグロ」。実は、あまり知られていない気がします。
何を隠そう私も知りませんでした(公私合わせて8回も行っているのに!)
なぜ今まで出会わなかったのか? インターネットで沖縄の食情報を調べ直してみました。
まず、「沖縄 グルメ」で検索。ヒットする上位10 サイトの中に残念ながらマグロを語った記事が見当たりません。「ソーキそば」「ちゃんぷる」「じゅーしー」「ポークたまご」「サーターアンダーギー」・・・などが常連として出てくる一方で、「マグロ」は隠れている。「沖縄 食材」で再検索するもマグロ情報に辿りつかず、「沖縄 魚」にするとミーバイやイラブチャーなどカラフルな魚が続々と登場。
その気候風土や歴史から、本土では出会えない料理や食材に溢れているのが沖縄の食の魅力。その中で、(一見珍しい様相をしていない)マグロは極めて奥ゆかしく、普段着の顔をして存在しているように感じます。
マグロを焼き肉で食べてみる。
「マグロは刺身で食べるも旨いけど、焼肉もオススメです」
沖縄に住む友人宅に誘われました(旅先で家庭の食卓に招かれるのはうれしいことですね)。この日はBBQで、マグロを主役に家主お気に入りの食べ方を披露してもらうことに。
クーラーボックスから登場したのは刺身用のぶつ切り。パックに山盛りでお値段は500円とは、「沖縄ではマグロが安い」との評判通りです。良心的な価格はすなわち、豊富な水揚げ量を誇る証拠。かつ、日常の魚であることもうかがえます。
庭に七輪を出して、マグロを網に並べていきます。脂が落ちると炎が上がり、香ばしい香りが表面を纏います。生でも食べられるので焼き加減はお好みで。
塩+シークワーサーで食べ、醤油+ワサビで食べ。 “焼き”と“生”を行ったり来たりしていると、「肉だけ食べ続けるより、身体に負担なく食べられるのです。脂も程良く落ちて、箸が進むでしょう?」と。気づけば、ひたすらマグロばかりを食べ続けていました。
マグロを「旬」で楽しむ贅沢
沖縄近海で獲れるマグロが4種類なのは先述の通り。1年中、季節に応じた旬のマグロを楽しむことができるため、スーパーの棚や、市場の冷蔵ケースの顔ぶれは暦と共に変わります。いつ訪ねても、その時期ならではの味わいに出会えるのは贅沢な楽しみです。
那覇市・泊漁港内の「泊いゆまち」では早朝からセリが行われ、施設内には仲買人が営む小売店や、マグロ料理を提供する飲食店が並び、地元客にも人気です。また、県内の漁港では、漁協の直売所などでも活きのよいマグロに出合うことができます。私が訪ねたのは、沖縄市泡瀬漁港にある「パヤオ直売店」。
氷を敷き詰めた大きなかごにキロ当たりの値段が掲げられています。
買った魚をその場で捌いてくれるので、鮮やかな解体テクニックに目を見張りながら待つのも楽しみの一つ。
ブロック、サク、薄切り、ぶつ切り・・・と、処理済みのマグロを買うのもOK。
「ハラゴー」は脂ののった腹の部分。
スーパーの棚で見つける、地元の暮らし。
地元のスーパー巡りは旅先での楽しみの1つ。沖縄では鮮魚売り場に「マグロコーナー」があることもあります。「トンボマグロ 刺し身」「キハダマグロ 刺し身」「キハダマグロ 炙り」「キハダマグロ 天ぷら用」など、種類別、食べ方別に大充実のコーナー。見上げれば頭上にはこんな看板が。
「沖縄は、生マグロの水揚げ高が全国トップクラス!! 生マグロの一大産地です。天然の生マグロをご堪能ください」
そう言えば、以前、沖縄北部の島「伊平屋島」で、漁協が営む喫茶店の人気メニューに「マグロカレー」がありました。「マグロが大量に獲れるので、新しい食べ方をいつも模索している」と開発チーム。珍しいカレーに気を取られていましたが、すでに沖縄のマグロ情報に触れていたことを思いだしました。
さて、季節は11月。ビンナガマグロの旬が始まります。
何度訪ねてもおいしい出会いがある沖縄で、マグロにもぜひ注目を。冷凍を経験しない生鮮マグロの味わいを、ぜひ現地でお楽しみください。
■パヤオ直売店
沖縄県沖縄市泡瀬1-11-34
http://www.jf-okinawa.jp/?directshop=%E6%B3%A1%E7%80%AC%E3%83%91%E3%83%A4%E3%82%AA
株式会社料理通信社 広報担当
浅井 裕喜(あさい ゆき)
食情報を伝えるメディア、料理通信社の広報担当。Facebookやtwitter、instagramなどSNS公式アカウントの“中の人”でもあり、読者やファンの声を拾いながら密なコミュニケーションを図る。
◎雑誌『料理通信』:http://r-tsushin.com/magazine/
食情報を伝えるメディア、料理通信社の広報担当。Facebookやtwitter、instagramなどSNS公式アカウントの“中の人”でもあり、読者やファンの声を拾いながら密なコミュニケーションを図る。
◎雑誌『料理通信』:http://r-tsushin.com/magazine/
料理通信社
食のオピニオンリーダーたちのアンテナを刺激する雑誌『料理通信』の刊行、“食で未来をつくる・食の未来を考える”をテーマにしたWEBサイト「The Cuisine Press」、食を取り巻く社会課題に向き合うアクションを行う活動体「or WASTE?」を運営。